ミュージカル『町田くんの世界』を鑑賞してきました。
端的に言うと、めっっっちゃ良かったです!!
堪えても堪えても涙の粒がポロポロこぼれてしまうほどでした。
※以下、作品の内容や演出等に言及しております。観劇を予定・検討されている方はご注意下さい。
あらすじ
物静かでメガネ。そんな外見とは裏腹に成績は中の下。アナログ人間で不器用。なのに運動神経は見た目どおりの高校生、町田一(川﨑皇輝)。
弟と妹4人の世話をしながら間もなく出産する母親(湖月わたる)を支え、家族全員から愛されている。
人間が好きで、その言葉と行動でみんなを変えて行く町田くんは、周りの人たちは気付いたら好きになってしまうような「人たらし」。ある日、授業中に怪我をしてしまった町田くんが保健室に行くと、そこに授業をサボっていた同級生の猪原さん(長澤樹)がいた。
猪原さんは彼の傷の手当てしてくれたにも関わらず、「私、人が嫌いなの」と言い放ちその場を去る。町田くんは彼女がなぜ周囲を拒絶しているのかが気になる。
(中略)
二人の距離は徐々に縮まっていくのだが…。
──公式HPより
シアタークリエにて絶賛上演中❗️
— 東宝演劇部 (@toho_stage) 2024年4月3日
ミュージカル『町田くんの世界』
📽️プロモーションビデオ公開✨
あらゆるミュージカルファンに
触れて欲しいこの世界❗️
東京公演は4/14(日)までの上演、
どうぞお見逃しなく‼️#川﨑皇輝 #長澤樹#湖月わたる #吉野圭吾https://t.co/WwdQ4GiUZz pic.twitter.com/qMKBleDlIx
演出/舞台美術について
メインの町田くんと猪原さん以外のキャストさん達が1人何役も務め、説明やモノローグ的な台詞を代わる代わる口にします。テンポが良くて楽しかった!
台詞とマイムだけでも、子供が手離してしまった風船や、逃げ出してしまった飼い犬がそこに見える。
セット
カラフルな窓や柱が複雑に入れ込む、シルバニアのお家みたいな2階建てのセット。
シーンによって教室になったり、家になったりするのですが、大きな転換をしなくても今はどんな場所が舞台でどういうシーンなのかスッと理解できる。
人力でぐるぐると回転する姿は、初めての感情を知って煌めき出す町田くんや猪原さんの心を現すかのよう。
プロジェクションマッピング
エピソードの区切りごとにタイトルが浮かび上がったり、雨音や心臓が高鳴る音がよぎったり。幻想的で舞台の世界観により没入できました。
キャストについて
川﨑皇輝さんも「説得力」の俳優さんだなと思った。
とにかくお人よしで人を疑わない、無垢な町田くん。子供が手離してしまった風船をキャッチし、逃げ出した飼い犬を捕まえ、道を渡るご老人を助け……。こんなピュアな男子高校生はおらんやろという感じですが、皇輝さん元来の温かく凛とした佇まいが見事にマッチしていました。本当にハマり役だった!
「本作は日常の物語で、劇的な展開があるわけではない」という原作者・安藤ゆき先生のコメント通り、大きな対立構造や生命を脅かすようなピンチは本作には訪れません。
つまり、たいがいの舞台の見せ所となるような強い感情の起伏のお芝居よりも、心の移り変わりを紐解く繊細なお芝居が求められるということです。
彼らより演技力や歌唱力の高い俳優さんはたくさんいるかもしれませんが、時に初々しく、時に瑞々しく、常に真摯にステージに立つ姿は彼らだけの唯一無二のものでした。
そんな2人を取り巻くキャストさんたちも全員魅力的で、中でも西野くん(鶴岡政希さん)の恋する姿がとってもチャーミングでした。
まとめ
家族が分からない、友情が分からない、自分が分からない。
真っ暗な部屋で膝を抱えて塞ぎ込んでいた猪原さんにとって、突然現れた町田くんは色彩であり、光であり、心そのものだった。
そんな二人の関係性を、薄暗い自分とキラキラの推しに勝手に投影してじ~~んと来てしまいました。
暗い世界のままでいいと思っていたのに、その人のせいで世界が眩しくなる。不要不急な色彩を次々に寄越してくるせいで心がいっぱいになる。こんな幸せもらっていいのかと不安になりながらも、このままもっと、と欲目が出る。
唯一言ってしまうなら、猪原さんが町田くんに惹かれていく過程はとっても丁寧に描かれていたけれど、町田くんが猪原さんに惹かれるプロセスがあまり描かれていないのが少し惜しいな~~と感じてしまいました。
でも、それはそれで考察の余地というか、余白として受け取らせていただきます。
2人きりのシーンこそ少なくとも、猪原さんのキュートさはありありと伝わってきました。
町田くんと出逢ってみるみるうちに表情も声色も明るくなっていく猪原さんの愛おしさよ!反面、誰彼かまわず優しさを振りまく町田くんにやきもきするいじらしさよ!!
きっと大きなきっかけが無くとも、町田くん自身も自覚がないうちに、彼の世界に猪原さんという光が射し込んできていたのかもしれません。
みんな友達、みんな家族。そう思って生きてきた町田くんが「猪原さんは他人だ」と気付いたシーンはグッと来ました。
最後、町田くんが猪原さんに何と言ったのか明らかにしないのもすごく良かった。
なんて言ったんだろう。
観客それぞれの心に浮かんだ台詞はこの舞台を観終えた私達だけのお土産で、観劇から数日が経った今日も、私の世界を少し眩しく彩ってくれています。
公演概要
東京公演
日程 2024年3月29日 (金) ~ 4月14日 (日)
会場 シアタークリエ
大阪公演
日程 2024年4月19日 (金) ~ 4月21日 (日)
会場 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
キャスト
町田くん 川﨑皇輝
猪原さん 長澤樹
氷室くん 神里優希
栄さん 斎藤瑠希
さくら 礒部花凜
英子先生 大月さゆ
ひかり 浜崎香帆
吉高 岩橋大
西野くん 鶴岡政希
母さん 湖月わたる
健一 吉野圭吾
スウィング 伊藤里紗/成海亮
スタッフ
原作 安藤ゆき「町田くんの世界」(集英社 マーガレットコミックスDIGITAL刊)
演出 ウォーリー木下
脚本・作詞 ピンク地底人3号
音楽・作詞・演奏 和田俊輔
美術 池宮城直美
照明 原口敏也
音響 高橋秀雄
映像 大鹿奈穂
衣裳 藤谷香子