あらし【嵐】
①荒く激しく吹く風。「峰の―か松風か」「春の―」。
②荒れ狂う風雨。暴風雨。「―の前の静けさ」(事件や騒動の起こる前の無気味な静けさのたとえ)
③比喩的に、激しい動きや状況。「不況の―」
④大野智、櫻井翔、相葉雅紀、二宮和也、松本潤の5人からなる日本の男性アイドルグループ。ジャニーズ事務所所属。レコード会社はジェイ・ストーム。1999年9月15日結成。同年11月3日にCDデビュー。
2019年1月27日、公式ファンクラブサイトにおいて2020年12月31日をもって無期限で活動を休止することを発表。
最初にその一報を聞いた瞬間は、時間も、空気も、すべて止まったみたいだった。
嵐を永遠だと思ったことはない。当たり前だと思ったこともない。だけど、嵐はこの世のアイドルの中でも、限りなく「永遠」と「当たり前」に近い存在だった。
もしかしたら私がお婆さんになっても、あの5人だけは若く美しいままずっとそこにいてくれるのではないか、とさえ漠然と信じてしまっていた。
本人たちからのコメントを読んでも、すぐに納得はいかなかった。
返してください、と思った。
私の大好きな、ステージで歌って踊る嵐を返して、と、何かを誰かを責めた。
ステージ上終身雇用、なんて、嘘ばっかり。
初めはそういう気持ちだった。
いち早く会見の内容を報じたのは、日曜夜の情報番組だった。
泣くつもりでいた。会見という名の嵐の葬式が始まると思った。署名とか集めて嘆願すればこんなの嘘にしてくれるんじゃないかと心の隅で思っていた。
だけど、蓋を開けてみたら、笑っている自分がいた。
そして、何万人、何億人が署名しようと額をつけて懇願しようと、この5人の満場一致以外に事をひっくり返す手札はひとつとしてないことも分かった。
番組を観終えて、開いたのは『アラフェス』のDVD。
何度も観たはずの映像。
何度も聞き慣れたはずの挨拶。
スコールのような歓声。
空に飛び立つ5色の風船。
5人が守りたいと誓った風景。
5人に守って欲しいと願った風景。
日付がまわって午前2時。
ようやっと、めいっぱい泣けた。
💐
ジャニオタになって早10年。
その原点は嵐で、人生初めての『自担』は櫻井翔くんだった。
当時小学生。個人的な話になるけれど、母の金切り声と父の怒鳴り声のアンサンブルを子守唄にして布団にくるまる、そういう生活が当時の幼い私の「当たり前」だった。
そんなある日、私の目の前に現れたのが櫻井翔くんだった。
きっかけはたまたま見ていたドラマ『ザ・クイズショウ』。翔くんは当時27歳。
こんなに美しい人が存在するのかと、小さな心が確かに震えた。
世界の誰より1番櫻井くんが大好きで、中学2年生くらいまでは、大人になったら絶対に櫻井くんと結婚する気でいた。櫻井くんにも相手を選ぶ権利はあります。
柔和であり強か、聡明でありどこか抜けていて、アンビバレントに振れる魅力に幾度となくときめいてきた。
そんな翔くんが一番輝いている嵐が大好きだった。
大切なことはすべて親より教師より、嵐から教わった。冗談ではなく、本当にそう思う。
私の「当たり前」に色彩を与えてくれたのは、間違いなく嵐だ。
小学校を卒業して、苗字と住む場所が変わった。
世帯主が先に出ていった家で最後に『嵐の宿題くん』の最終回を観て、次の朝にその家を引き払って、母の故郷へ向かった。
子守唄は怒鳴り声ではなく5人の歌声や笑い声になった。
初めは馴染めなかった田舎の町の生活も、クラスメイトの女の子たちと嵐の話で盛り上がって仲間に入れてもらえるようになった。
高校生になった辺りから、ジャニーズの他のグループや、音楽やお笑い、演劇など興味の幅が広がっていったけれど、やっぱり自分がエンタメを取捨選択する時の根底には、ずっと嵐がいるような気がする。今も。
💐
今回の会見は、印象的なシーンが多かった。
まず、衣装がそのままステージにも出られそうなカジュアルさで、相葉くんなんてピンクのジャケットとか着ちゃっている。 形式自体も非常にラフで、机も椅子もなく、1時間あまりの会見にも関わらず終始立った状態(何かあった時にすぐ退場させられるように、という考えもあったかもしれない)。
20年の節目を迎えるグループの活動休止という大きな宣言をする会見にしては異様とも言えるくらいライトな雰囲気だった。 しかしそれも、嵐本人からの要望として会見前に予めそのような呼び掛けがあったという。
初めの大野くんの挨拶こそ堅苦しかったけれど、質疑応答のターンになり他のメンバーがマイクを握るとその雰囲気も次第に和らいで行った。
場が暗くならないように冗談を交えながら答えつつも、真摯に対応した二宮くん。
唯一「驚かなかった」と語り、一番冷静にフラットな目線で事態を俯瞰していた潤くん。
穏やかに言葉を選ぶように話しながらも、攻撃的な質問をやんわり牽制した相葉くん。
理性的に論理的に説明し、他のメンバーが答えに詰まるような場面には真っ先にマイクを持った翔くん。
5人全員がそれぞれの聡明さを持ち寄って臨んだ会見。
特にシーンとして印象的だったのは、記者に「喧嘩にはなりませんでしたか」と問われた5人。
松本「ないです」
二宮「書きたそうですね(笑)」
相葉「そうかぁ、(喧嘩)しときゃ良かったな」
大野・櫻井「(爆笑)」
凄くグッと来た。
嵐のどんなところが好きか聞かれたら答えたいことのすべてがこの瞬間に詰まっていた。
号泣する準備も、絶望する準備も出来ていた。
けれど、笑う準備なんてしてなかった。
嵐をもっともっと好きになってしまう準備ももちろんしていなかった。
ずるい。ずるすぎる。
最初こそ、憤りであるとか、悲しさ、寂しさといったネガティブな感情のフルコースだったけれど、会見の様子を見届けて本人たちの声を聞いて、こうして時間が経って、ようやく受け止められてきた。
ただ、2021年が来て、改めてその時を迎えたら、きっとまた込み上げる感情もあると思う。
それでもいい。
好きになって10年、それ以上の喜びや、嬉しさや、幸せや、笑顔を嵐は私にくれたから。
寂しいのは、悲しいのは、それだけあの5人を好きでいられた証左だろう。
私は往生際の悪いオタクだから、この痛みも愛おしく抱き締めて、5つの輪がまたもや集まり聖地に赴くその瞬間を、待ちわびて。
また集まったその時は、それまでの時間、それぞれがどんな風景を見てきたか、ほんの少しでかまわないから、教えてください。